
日本での個展、フランスやドイツ、ベルギーでの個展。日本とフランスの二重生活の疲労が肝炎という具体的なカタチとなって私を襲いました。
子供が学齢期に達し、老いた両親のことも気になり始め、また健康的な不安を感じた私は、拠点をパリから日本へ移すことを決意しました。
日本に帰国しても一向に体の調子が上を向くということはなく、持続する肝炎。そんな時思い出したのは、大先輩である荻須高徳先生のお言葉です。
「絵描きは困った時には絵を描け。全力をあげて描け。」 私は12年間のパリでの生活の総決算としての大作を1点描いてみたいと強く思い、500号の大作に取り組みました。
「地 洪水の後」

グレイ1色で憂鬱な風が吹いているような印象を与えるのですが、その中には布切れ、人間の寝ているような形、鳥の羽、蝶、昆虫、それからパリで見かける町の一群。そこに散りばめられた水、水滴。そういったものが醸し出す記憶の一大集成であります。
私は病気で苦しめられており、外へ出て行き自分を解放することができなかった。ある意味では閉じ込められていました。ですからその閉じ込められていたエネルギーというものを今発散して、自分の画業の中にはっきり位置づけてやりたい。「このような時期があったのですよ。」と位置づけてやりたい、という気持ちがありました。この作品は、まるで授かるように私から生まれた作品で、出来上がった時には安堵感がありました。